決算賞与を「未払い計上」して節税したい?その前に確認すべき落とし穴とは
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決算賞与って、なに?
決算賞与とは、会社の決算(事業年度の終了)にあわせて、利益が出たタイミングで支給されるボーナスのことです。
「利益が出たから、社員にちょっと還元しよう!」
「でも、今すぐ現金がないから、支払いは来月にしよう」
――そんなとき、「未払い計上」という方法で、まだ払ってない賞与もその期の経費(=損金)にできるルールがあります。
でも、この「未払い計上」、じつは意外と落とし穴があるんです。
未払いでも損金にできる3つの条件
賞与をまだ払っていないのに、その期の経費にするには、次の3つの条件をすべて満たす必要があります。
- 期末までに、各社員へ具体的な金額を通知していること
→「売上×○%」のようなざっくりした通知はNG - 通知した日から1か月以内に支払うこと
→たとえば9月末に通知したら、10月末までには支払う必要あり - 帳簿上、未払いとしてちゃんと記録(損金経理)していること
ここが落とし穴:「支給日在籍要件」があるとNGに!?
多くの会社では、賞与規程に
「賞与は支給日に在籍している社員にだけ支給する」
と書いてあります。これ、税務的には大問題。
なぜかというと、「未払い計上」は
“必ず支払うと決まっていること(=債務が確定している)”
が大前提だから。
でも、「支給日に辞めたら払わないよ」というルールがあると、
「この人、本当にもらえるのか?わからないよね?」
となって、税務署は「損金にできません」と言ってくる可能性があるのです。
もっと怖い:全員が実際に受け取っていてもNG?
驚くべきことに、
- 通知した社員が全員、ちゃんと支給日まで会社にいた
- 全員に決算賞与を支給した
という結果でも、
「通知の時点では誰が辞めるかわからなかったでしょ」
という理由で、全員分が否認される可能性があります。
じゃあ、どうしたらいいの?
対策としては次の2つがあります。
✅ 1. 決算賞与は期末までに支払ってしまう
一番確実な方法です。支払いを済ませれば、「未払い」ではなくなるので、当然損金になります。
✅ 2. 賞与規程を見直す
「夏・冬の賞与」と「決算賞与」を分けて、決算賞与には「支給日在籍要件」をつけないようにしましょう。つまり、
- 夏・冬の賞与:支給日に在籍している人だけが対象
- 決算賞与:通知を受けた人には必ず支給(たとえ辞めても)
というルールに変えるのです。
まとめ:制度をうまく使うには、ルールの理解がカギ
決算賞与の「未払い計上」は、会社にとって節税になる便利な制度ですが、ルールを正しく守らないと、あとで税務調査で否認されるリスクがあります。
社内の賞与規程をしっかり見直したうえで、税理士にも早めに相談しておくと安心です。
田中雅樹(税理士)
●単発相談担当・税務顧問担当はタナカ本人です
●社長の「こうしたい」を取り入れた問題解決を提案
●県内の専門学校・非常勤講師として『租税法』他を担当(2019年4月~)
●FM-FUJI「教えて税理士さん」出演(東京地方税理士会広報活動)
●ブログは毎日
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