【国税庁質疑応答】相続時精算課税適用者が先に死亡した場合の「相続税2割加算」の考え方
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2025年12月3日、国税庁の質疑応答事例が新たに追加されました。
今回取り上げるのは、
相続時精算課税の適用を受けていた者が、特定贈与者より先に死亡した場合に、
その相続人に相続税の2割加算が適用されるか
という、やや複雑ですが実務上重要な論点です。
■ 事案の概要(時系列で整理)
まずは事案をシンプルに整理します。
登場人物
- 乙:父(特定贈与者)
- 甲:子(相続時精算課税の適用者)
- 丙:甲の妻(乙から見れば「子の配偶者」)
※乙の配偶者(甲の母)は以前死亡(甲より先に亡くなっている)
時系列
- 〇年
甲が、父・乙から土地の贈与を受け、
👉 相続時精算課税を選択 - 〇+3年
甲が乙よりも先に死亡
👉 相続税法21条の17により、
丙(甲の妻)が、相続時精算課税に伴う権利義務を承継 - 〇+5年
乙が死亡
👉 丙は、
- 乙からの遺贈
- 甲から承継した相続時精算課税に伴う権利義務
の両方について、相続税の申告が必要
■ 問題となったポイント
このケースでは、丙は
- 乙の一親等の血族でも
- 乙の配偶者でもない
ため、通常であれば 相続税の2割加算 が問題になります。
そこで疑問となるのが、
1. 乙からの遺贈による相続税
2. 甲から承継した相続時精算課税に伴う相続税
この 2つの申告それぞれに、2割加算は適用されるのか?
という点です。
■ 国税庁の結論(結論だけ先に)
結論は次のとおりです。
| 申告の内容 | 2割加算 |
|---|---|
| 乙からの遺贈による相続税 | 適用あり |
| 甲から承継した相続時精算課税に伴う相続税 | 適用なし |
■ なぜ結論が分かれるのか?
ポイントは、
「どの被相続人との関係で判定するか」 にあります。
1. 乙からの遺贈について
- 被相続人:乙
- 判定時点:乙の死亡時
- 丙の立場:
👉 乙の一親等の血族等に該当しない
➡ 2割加算の対象
2. 相続時精算課税に伴う権利義務の承継について
ここが今回の事例の核心です。
- 表面的には「乙の死亡に係る相続税」だが
- 実質的には
👉 甲が相続時精算課税を選択していたことに基づくもの
国税庁は、
相続時精算課税適用者が
特定贈与者より先に死亡している場合には、
相続時精算課税適用者が死亡した時点の関係で判定するのが適当
と判断しています。
- 判定時点:甲の死亡時
- 甲の立場:
👉 乙の一親等の血族
➡ 2割加算は適用されない
■ 実務上の重要ポイント
この事例から、次の点が読み取れます。
● 2割加算は「申告単位」で判定する
- 同じ人が異なる地位で複数の相続税申告をする場合
- それぞれ 別々に2割加算の判定を行う
● 相続時精算課税は「誰を基準に見るか」が重要
- 特定贈与者の死亡時ではなく
- 相続時精算課税適用者の死亡時の関係が基準になるケースがある
■ まとめ
今回の国税庁質疑応答事例のポイントは次のとおりです。
相続時精算課税適用者が特定贈与者より先に死亡した場合、
その相続人が申告する相続税は
内容ごとに2割加算の適否を判定する
- 遺贈による取得 → 被相続人基準
- 相続時精算課税の承継 → 適用者基準
という、丁寧な切り分けが求められる事例です。
相続時精算課税を利用しているご家庭では、
「誰が先に亡くなるか」によって、
相続税の計算が大きく変わる可能性がある点に注意が必要です。
田中雅樹(税理士)
●単発相談担当・税務顧問担当はタナカ本人です
●社長の「こうしたい」を取り入れた問題解決を提案
●県内の専門学校・非常勤講師として『租税法』他を担当(2019年4月~)
●FM-FUJI「教えて税理士さん」出演(東京地方税理士会広報活動)
●ブログは毎日

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テレビ版は23分だけなんですね。
どうしても見たい人はどうするのでしょう。
DVD化ですかね。
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