なぜ日本の法人税率は上げられないのか?わかりやすく解説
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法人税は、企業の利益に課される税金。
「法人税をもっと上げて、大企業からもっと取るべきだ」
といった声もありますが、実は日本の法人税率はそう簡単には上げられない事情を抱えています。
今回はその背景を、税制・経済・国際競争の視点からわかりやすく解説します。
1. 企業の海外流出リスク
法人税率が高くなれば、企業は税負担の軽い国へ拠点を移す可能性があります。
とくにグローバルに展開している企業にとって、税率の差は重大な意思決定要因です。
- 本社機能の海外移転
- 海外子会社への利益移転(BEPS対策の標的にも)
結果、日本国内の雇用や投資が失われ、税収がかえって減る可能性すらあります。
2. 国際的な「税率競争」の中にある
法人税率は、いわば「国家間の競争力のひとつ」。
日本より税率が低い国があれば、企業はそちらに投資しようとするのが自然です。
実際、2024年時点での法人税率(実効税率)は:
国・地域 | 法人実効税率(概算) |
---|---|
日本 | 約30% |
韓国 | 約27.5% |
シンガポール | 約17% |
アメリカ | 約25〜27%(州により変動) |
日本がこれ以上引き上げれば、「投資先として選ばれにくい国」になってしまう懸念があります。
3. 雇用・設備投資の減少につながる
法人税の増税は、企業にとって**キャッシュアウト(資金流出)**の増加を意味します。
資金が税金に回れば、
- 従業員の給与アップ
- 新規採用
- 設備投資・研究開発
といった経済循環に使える資金が減り、結果的に国内経済にもマイナスの影響を与えます。
4. 中小企業への影響も大きい
法人税率の引き上げは、大企業だけでなく中小企業にも及びます。
中小企業は内部留保も少なく、税率アップの打撃をダイレクトに受けやすい層。
税率を一律に引き上げると、かえって
- 資金繰り悪化
- 倒産増加
- 納税額減少
といった「税収減」に陥るリスクすらあります。
5. グローバル・ミニマム課税の時代背景
OECDが進める「グローバル・ミニマム課税」では、大企業に対して最低15%の法人税負担を世界で統一しようという流れになっています。
この中で、すでに30%前後の法人税率を持つ日本が、さらに税率を上げるのは国際協調に逆行するという見方もあります。
むしろ今後は、税率よりも
- 課税ベースの適正化(抜け穴をふさぐ)
- グローバル連携の中での税制設計
が求められる時代です。
まとめ:税率よりも“中身”が問われている時代へ
日本の法人税率は、すでに国際的に見ても高めの水準。
だからこそ「上げれば税収が増える」とは単純に言えません。
これからの議論は、税率ではなく、“どう公平に課税するか”
そして、企業活動と調和する税制をどう作るかに移っていくべきなのです。
某太郎の「法人税率あげろ!」に騙されないで~
田中雅樹(税理士)
●単発相談担当・税務顧問担当はタナカ本人です
●社長の「こうしたい」を取り入れた問題解決を提案
●県内の専門学校・非常勤講師として『租税法』他を担当(2019年4月~)
●FM-FUJI「教えて税理士さん」出演(東京地方税理士会広報活動)
●ブログは毎日
本日記
蒸し暑すぎる日でした。
たまらず扇風機を引っ張り出し。
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