ニガテを “半分、強い” に。山梨県中央市の税理士

その修繕費、本当に「資産計上」?──修繕費との違いをやさしく解説

WRITER
 
この記事を書いている人 - WRITER -

スポンサーリンク

 

建物や機械などの固定資産を修理したとき、
「これは修繕費でいいのか?それとも資産計上なのか?」
迷った経験、あると思います。

税務上、この判断はとても重要です。
なぜなら、「修繕費」と「資産計上」では、経費になるタイミングが全く違うからです。


🔹まず基本:修繕費と資産計上の違い

区分 処理方法 損金になるタイミング
修繕費 その年の経費として一括計上 支出した年に全額経費
資産計上 固定資産として計上し、減価償却で経費化 数年かけて少しずつ経費

つまり、同じ1,000万円の工事費でも、
●修繕費なら今年すぐに経費になるのに、
●資産計上だと何年もかけて少しずつしか経費にならない
なんて違いがあるのです。


🔹判断のポイントは「原状回復」か「価値の向上」か

修繕費か資産計上かを分ける最大のポイントは、

🔸その工事が「壊れた部分を元に戻す」だけなのか?
🔸それとも「資産の価値を高めた」ものなのか?

という点です。


🔹実際の裁決事例から見る判断の考え方

昭和63年10月25日の国税不服審判所の裁決で、賃貸用建物15棟の屋根の断熱防水工事が問題になりました。

  • 鉄筋コンクリート造・平屋建て・陸屋根(平らな屋根)
  • 屋根全体を断熱防水シート(CS工法)で覆う工事

という内容です。

納税者の主張

屋根が劣化して危険だったので、原状回復のための工事
よって修繕費

国税の主張

屋根全体を新しい材質に替えたのだから、価値が上がっており資産計上

国税不服審判所の判断

納税者の主張を認めました。
理由は次のとおりです。

  • 建物の効用を維持するための補修工事である
  • 工事の質的レベルは中以下であり、建物の価値や強度は上がっていない
  • よって、通常の維持管理費用=修繕費としてOK

🔹「どんなに多額でも」修繕費になる場合がある

この判断から分かるのは──
💡金額の多さではなく、「性質」が大事
ということです。
まとめますと、

  • 通常の維持管理や原状回復のための工事であれば
     ➡ どんなに多額でも修繕費でOK!
  • 建物の価値を高めたり、耐用年数を延ばすような工事であれば
     ➡ 資産計上(減価償却)

🔹別の事例(平成13年9月20日裁決)

屋根工事の事例でも判断が分かれました。

建物 工事内容 判断
A カラートタンで屋根を覆う 資産計上(納税者の主張✕)
B 陸屋根に鉄骨+アルミトタン 修繕費(納税者の主張〇)
C 陸屋根に鉄骨+カラー鉄板 修繕費(納税者の主張〇)

どのような材料を使い、どんな目的で行ったか──
それがポイントでした。


🔹実務的な考え方(税理士の現場感覚)

実際には、工事の内容を見ても判断が難しいことが多いです。
納税者に伝えたいのは、

「修繕費として処理して問題ないと判断すれば修繕費に計上」
「仮に否認されても、資産計上して減価償却すれば最終的に経費になる」

ですね。


🔹よくある誤解

税務調査でありがちなのが、

「金額が大きいから資産計上」
「付加価値を伴う修繕だから資産計上」

でも、これは誤りです。

✅ 通常の維持管理や原状回復のための工事なら
✅ どんなに多額でも修繕費でOK

です。


🔹まとめ

チェックポイント 処理の方向性
原状回復・維持管理 修繕費(経費)
性能向上・耐用年数の延長 資産計上
判断が難しい場合 修繕費でもOK(ただし説明資料を残す)

修繕費か資産計上かの判断は、
税務調査でもよく議論になるポイントです。

迷ったときは「その工事は“良くした”のか? それとも“直した”だけか?」を考えてみましょう。

田中雅樹(税理士)

●単発相談担当・税務顧問担当はタナカ本人です
●社長の「こうしたい」を取り入れた問題解決を提案
●県内の専門学校・非常勤講師として『租税法』他を担当(2019年4月~)
●FM-FUJI「教えて税理士さん」出演(東京地方税理士会広報活動)
●ブログは毎日

 

本日記

寒い…ですが、まだジャケット着れません。
場所によっては汗をかいてしまうからですね。
気候的には今が一番なのですが、汗っかきには中途半端な時期だったりします。

今日のラジオ

●服部廉太郎のここでしゃべらせてください!

この記事を書いている人 - WRITER -

Copyright© よってけし!山梨県中央市タナカジムショ , 2025 All Rights Reserved.