定期同額給与の例外が認められる範囲とは?~原則と例外を整理して理解しよう~
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「役員報酬は毎月同じ額にしないとダメ」
という話を聞いたことがある人は多いと思います。
これは法人税法上の「定期同額給与」というルールによるもので、
役員報酬を損金(経費)とするためには、
原則として毎月同じ金額で支払う必要があるのです。
でも、実際の経営では、期の途中で役員報酬を見直したい場面もありますよね。
「売上が伸びたから少し増やしたい」とか、「経営が苦しいから減らしたい」など。
そんなとき、どこまで例外的な改定が認められるのか?
今回はその「範囲」について、分かりやすく整理してみましょう。
1. 基本ルール:改定は「定時株主総会」で行う
最も安全なのは、決算後の定時株主総会で報酬額を改定する方法です。
たとえば3月決算の会社であれば、5月(6月)の定時株主総会で新しい報酬額を決め、その後は毎月同額を支払うかっこうです。
国税庁のQ&Aでも、次のように説明されています👇
定時株主総会で翌期の報酬額を決め、
その翌月分から新しい金額で支給するのは問題ない。
つまり、5月(6月)に株主総会を開いたなら、6月(7月)分の報酬から新しい金額にしてOKということです。
2. 実は「翌々月から改定」も認められるケースがある
税務上は、報酬改定の決議をしてから3か月以内に改定していればOKとされています。
そのため、たとえば次のようなケースでも認められる場合があります。
6月に株主総会で改定を決議 → 8月支給分から改定
このように、
「翌月ではなく翌々月から」でも、3か月以内であれば要件を満たす、
という解釈もあります。
ただし、これはあくまで「例外的な扱い」であり、
会社の支給日や株主総会のタイミングによって判断が変わる場合もあります。
3. 「役員報酬には締日がない」ことに注意
一般の従業員の給与は、「◯日締め・◯日払い」といった形で管理されますが、
役員報酬にはこの“締日”という考え方がありません。
これは、役員が「雇用」ではなく「委任契約」であるためです。
つまり、労働の対価ではなく「職務執行の対価」という位置づけです。
そのため、
「7月分を8月10日に支払う」といった考え方は、
正確には当てはまらないのです。
この点を踏まえると、
「6月の株主総会で改定した報酬を8月に支給」した場合でも、
税務上は「改定の効力がいつ発生したか」が重要になります。
4. 現実的な判断のポイント
結論から言えば――
✅ 原則は「株主総会の翌月分から改定」(安全)
✅ 「翌々月から」などの例外もあるが、慎重に判断すべき
✅ 不安なら事前に税務署へ確認するのが確実
ただし、役員報酬の改定タイミングを巡っては、税務署の担当官によって解釈が異なる可能性もあります。
「自社の支給日だと翌月改定が難しい」などの場合は、早めに税理士に相談したほうがいいかもしれません。
まとめ:キホンは「原則」で
定期同額給与のルールは、税務の中でも形式的で厳格に扱われる項目のひとつです。
とはいえ、会社の実情に合わせた柔軟な運用も、一定の条件のもとで認められています。
- 定時株主総会で決める
- 改定は原則翌月から
- 3か月以内であれば例外的に認められる場合もある
この3点を押さえておけば、税務リスクを避けつつ、現実的な運用ができるはずです。
田中雅樹(税理士)
●単発相談担当・税務顧問担当はタナカ本人です
●社長の「こうしたい」を取り入れた問題解決を提案
●県内の専門学校・非常勤講師として『租税法』他を担当(2019年4月~)
●FM-FUJI「教えて税理士さん」出演(東京地方税理士会広報活動)
●ブログは毎日

本日記
税理士会の研修動画を少し消化。
ノルマ未クリアを2月3月に持ち越すのは怖いので、年内に9割くらいは持っていきたいところ。
と書いてしまうとネガティブイメージを振り撒いてしまいますが、視聴しだすと非常に勉強になります。
(当たり前か…)
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●東京ポッド許可局
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