【養老保険が“経費にならなかった”事例】個人事業主は特に注意!広島高裁判決から学ぶポイント
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企業が従業員のために生命保険(養老保険)へ加入することはよくあります。
- 退職金の準備
- 従業員の万一の保障
こうした目的で利用されるため、支払った保険料は 原則「1/2を損金、1/2を資産計上」 というのが一般的な取り扱いです。
ところが――
個人事業主の場合、この「1/2損金」すら認められず、全額経費否認になったケースがあります。
今日はそのポイントをわかりやすく解説します。
■ 法人と個人事業主で取り扱いが違う理由
法人が養老保険に加入した場合、支払保険料の1/2は
- 福利厚生費として経費 または
- 給与として経費
となるのが通常です。
しかし、個人事業主にはこれらに加えてもう一つ、税務上の概念があります。
✔「家事関連費」という考え方
個人事業主が支出した費用は、
- 事業に必要な部分
- 家事(プライベート)に関係する部分
が混在しているケースがあります。
そして 家事関連費は「事業に必要な部分を明確に区分できない限り、経費にできない」 とされています。
実は、今回紹介する養老保険が経費否認された理由もこの点にあります。
■ 広島高裁(平成28年4月20日)で起きた「全額否認」事例
この事例では、開業医(個人事業主)が従業員を被保険者として養老保険に加入し、
- 死亡保険金の受取人:従業員の家族
- 福利厚生を目的としていた
と主張していました。
しかし裁判所の判断は非常にシビアでした。
● 裁判所の判断(要点)
- 福利厚生目的があっても「家事関連費」扱い
- 保険料全額(本来資産計上すべき部分も含む)が家事関連費
- 「事業に必要な部分」を明確に区分できない
→ よって「必要経費として認められない」 - 1/2を損金とする法人税の考え方は適用されない
つまり、本来であれば1/2損金となるはずの部分までも経費否認された のです。
■ なぜ否認されたのか?
裁判所は次のように指摘しました。
- 多額の解約返戻金がある養老保険を活用して、
実質的には「自分の資金を積み立てていた」 と評価できる - 福利厚生目的という主張は認められない
- 危険保険料(死亡保障分)が1/2であるとも認められない
- そもそも「業務上必要な部分」の区分ができない
→“法人ならセーフな形でも、個人事業主ならアウトになり得る”
ということです。
■ 個人事業主が養老保険に加入する場合の注意点
個人事業主が同じ失敗をしないためには、次の点がとても重要です。
✔ 加入対象者は公平に
・新入社員も加入対象にする
・「入社○年以上」など合理的な基準を設定する
✔ 退職者の契約は原則解約
・法人化を見据えて継続する場合など、特例はあります
✔ 満期日は退職予定日に合わせる
✔ 保険金額は退職金相当額にする
これらを満たさないと、税務署から
「本当に福利厚生目的なの? 実質は事業主の貯蓄では?」
と疑われやすくなります。
■ 結論:個人事業主の養老保険はリスクが高い
法人と違い個人事業主(特に医師・不動産オーナー・飲食店など)は、福利厚生目的で加入しても
- 家事関連費扱い
- 経費にすら認められない
というリスクがあります。
実際、今回紹介した広島高裁の事例は 「全額経費不可」 の厳しい判断でした。
■ 養老保険の加入を検討している個人事業主へ
- 現在加入している養老保険の取り扱いが適切か
- 福利厚生として認められる条件を満たしているか
- 税務調査で否認されるリスクはないか
これらは必ず確認しておく必要があります。
特に「退職金準備を目的とした保険」は取り扱いが難しいため、迷う場合は専門家に相談した方が安全です。
田中雅樹(税理士)
●単発相談担当・税務顧問担当はタナカ本人です
●社長の「こうしたい」を取り入れた問題解決を提案
●県内の専門学校・非常勤講師として『租税法』他を担当(2019年4月~)
●FM-FUJI「教えて税理士さん」出演(東京地方税理士会広報活動)
●ブログは毎日

本日記
ゼルダ無双封印戦記、
そろそろ終わりにしたいものの、小さなクエスト的なものもなるべくクリアしたく、なかなかクリアとなりません。
うーん、ゲーム下手。。
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