ニガテを “半分、強い” に。山梨県中央市の税理士

その生前贈与は「いつ行われたことになるのか?」

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相続や贈与に関するご相談の中で、よくあるのが
「親が子供名義で預金を積んでいた場合、それはいつ贈与が成立したことになるのか?」
というケースです。

今回は実際の裁決例を踏まえながら解説します。


典型的な事例

  • 父親が毎年110万円を子供名義の口座に預けていた。
  • 贈与契約書などは作っていない。
  • 子供は預金の存在を知らないまま。
  • 父親がある時点で通帳を子供に渡し「これはお前のお金だ」と告げた。

たとえば10年間積み立てられていた場合、通帳を渡された時に、1,100万円をまとめて受け取った という状況になります。


贈与の成立時期は?

この場合、

  • 毎年110万円の贈与は成立していない
  • まとめて渡された時点で贈与が成立

と判断されます。
つまり「贈与の時期」は 通帳を受け取り、子供が財産の存在を認識した時 になるのです。


実際の裁決例(令和3年9月17日・国税不服審判所)

  • 納税者の主張:毎年の贈与が成立していた。
  • 国税の主張:まとめて渡した時点で贈与が成立。

→ 裁決は 国税の主張を認める ものでした。

その結果、贈与は 相続開始の3年以内(当時の制度、現行では7年以内) に行われたものとされ、相続財産に加算されることとなりました。


裁決のポイント

  • 子供は毎年の入金を知らなかった。
  • まとまったお金を渡された時点で、初めて贈与を受けた事実を認識した。

贈与は「贈与する側の意思」だけでは成立せず、 受け取る側の承諾 が必要です。
これが「諾成契約」という考え方です。


よくある誤解と対応策

こうしたケースは世の中に数多くあります。
運よく税務調査に至らず、時効を迎えることも少なくありませんが。。
トラブルになれば課税リスクは大きくなります。

本来すべきこと

  • 毎年の贈与契約書を作成する
  • 子供に預金の存在を知らせ、実際に管理させる
  • 贈与税の申告を行う(基礎控除内でも、形を整える意味は大きい)

今からできること

もし既に「子供名義の預金=実態は父親の財産」という状態になっているなら、
【贈与をやり直す】
という判断も検討に値します。

もちろん贈与者の年齢や相続時期を考える必要がありますが、「後の祭り」とあきらめる前に対策をとることが重要です。


まとめ

  • 子供が知らないまま積まれた預金は、贈与として成立していない。
  • まとまって渡された時点が「贈与の成立時期」。
  • 贈与は「贈与者の意思」と「受贈者の承諾」がそろって初めて成立する。
  • 正しい手続き(契約書・申告・実際の管理)が重要。

生前贈与は相続対策の有効な手段ですが、やり方を誤ると 「せっかくの贈与が無効扱い」 になってしまうこともあります。

将来のトラブルを避けるために、今一度ご自身やご家族の贈与の形を見直してみてはいかがでしょうか。

田中雅樹(税理士)

●単発相談担当・税務顧問担当はタナカ本人です
●社長の「こうしたい」を取り入れた問題解決を提案
●県内の専門学校・非常勤講師として『租税法』他を担当(2019年4月~)
●FM-FUJI「教えて税理士さん」出演(東京地方税理士会広報活動)
●ブログは毎日

 

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