【残業を副業に?】内閣府コンテストの“問題あり”優勝アイデアを税理士が解説
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こんにちは、税理士の田中です。
政府が開催した「賃上げを幅広く実現するための政策アイデアコンテスト」(2024年6月)で、あるちょっと変わったアイデアが優勝しました。
内容を見たとき、「これはマズいのでは…?」と思ったのは、私だけではなかったはず。
今回は、その優勝アイデアの中身と、なぜ問題視されているのかを、税務・労務の視点からわかりやすく解説します。
■ 優勝したアイデア:残業を“副業”扱いにして手取りアップ?
アイデアのざっくりした内容はこうです。
「定時以降の労働を、副業として個人事業主契約でやれば、残業代・社会保険料がいらず、手取りが増える」
つまり、
- 会社にとっては: 残業代や社会保険料の負担が減る
- 従業員にとっては: 支給額に対して税・社会保険料が少なくなる
…という、**“WIN-WINに見える仕組み”**です。
■ なぜ問題なの?実態は“労働者”のまま
このアイデアが問題視されている一番の理由は、形式的には“個人事業主”でも、実態は完全に“労働者”だからです。
✅ 労働法上の「労働者性」は“実態”で判断される
- 指揮命令を受けて働く
- 勤務時間・場所が決められている
- 代わりの人に仕事を任せられない
これらに当てはまれば、契約が「業務委託」だとしても、労働者とみなされます。
■ 社会保険制度への“脱法”リスクも
会社と個人事業主の契約にすれば、たしかに社会保険料の負担はゼロになります。
でもそれは、
- 本来払うべき保険料を免れている
- 本来受け取るべき保障(労災・厚生年金など)もなくなる
ということであり、**公的制度の抜け道を使った“脱法スキーム”**と批判されています。
■ 実際に専門家からも批判の声
全国社会保険労務士会連合会:
「形式だけの業務委託は、労働法の趣旨に反する」
厚労省の過去の通知でも:
「使用従属性があれば、委託契約でも労働者と判断」
多くの社労士・労務専門家:
「働き方改革と逆行しており、公平な労働環境を壊しかねない」
■ なぜこんなアイデアが優勝してしまった?
このコンテストはあくまで“発想力勝負”。
実務的な整合性や法的リスクは二の次だったのかもしれません。
(内閣府の担当者が無知だっただけかもしれません。だとしても、なにかしらチェックできる体制がなかったものかと思いますが…)
ただし、「政府のお墨付き」という誤解を招きかねない発信は慎重にしてほしいところです。
■ まとめ:形式でなく“実態”がすべて。税や労務の基本です
ポイント | 内容 |
---|---|
優勝アイデアの中身 | 残業を副業扱いにしてコストと税負担を軽くするという発想 |
問題点 | 実態は労働者なのに、制度をすり抜ける形になってしまう |
専門家の意見 | 「脱法行為」「制度の趣旨に反する」との批判が相次ぐ |
見た目は「賢い節税・節約」でも、制度の趣旨をねじ曲げるような手法は、結局あとでツケが回ってきます。
こうした制度の“境界線”に関するご相談も、税務と労務の両面からしっかりお応えしますので、気になることがあればいつでもご相談ください!
田中雅樹(税理士)
●単発相談担当・税務顧問担当はタナカ本人です
●社長の「こうしたい」を取り入れた問題解決を提案
●県内の専門学校・非常勤講師として『租税法』他を担当(2019年4月~)
●FM-FUJI「教えて税理士さん」出演(東京地方税理士会広報活動)
●ブログは毎日
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