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【国税庁が不動産小口化商品の贈与スキームを問題視】相続・贈与の現場で何が起きているのか?

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国税庁が2025年11月13日に開催された政府税制調査会の専門家会合に「財産評価を巡る諸問題」と題する説明資料を提示しました。
国税庁が自ら実例(不動産小口化商品の贈与によって相続税・贈与税を大幅に軽減するスキーム)を示して説明したという点で、これは非常に重要な動きです。

税務の現場でも、確実に今後の方針に影響が出ると考えられます。


■ 不動産小口化商品とは?

高額な不動産を細かく分割し、投資商品として販売したものです。

  • 1口あたり数百万円〜
  • 賃料収益は持分に応じて分配
  • 多くは信託受益権として販売

相続税対策の文脈では、通達評価額(=路線価評価)と市場価値が大きく乖離する点が注目され、実務でも利用が広がっていました。


■ 国税庁が示した“典型的なスキーム”の流れ

国税庁が会合で示したのは、次のような事例です。

● 事例の流れ

  1. **贈与者A(68歳)**が
     不動産小口化商品を 3,000万円(市場価格)で購入
  2. 5か月後、9歳のBに贈与
     贈与評価額は 480万円(通達評価=路線価評価)
  3. Bは半年後に売却
     → 売却額はほぼ3,000万円(現金化)

● 評価額の乖離

  • 取得価額:3,000万円
  • 通達評価額:480万円
  • 評価差:2,520万円

● 贈与税の差

もし現金3,000万円を贈与していたら
→ 贈与税 1,195万円

今回のケース
→ 贈与税 49万円

差額:1,146万円

98%近い贈与税の軽減が実際に起きているわけです。
国税庁としては、これを「放置できない」と判断したと推測されます。


■ 国税庁が強い問題意識を持っている理由

今回、政府税調という“公式の場”で複数の実例が示されたことは、制度修正の予兆 と見るべきです。
国税庁が指摘したポイントは以下のとおり。

● 通達評価額と市場価値の乖離が大きすぎる

不動産小口化商品の場合、市場価値は変わらないのに、通達評価額が極端に低いことが多い。

● 市場で即座に現金化できる

受贈者がすぐ売却し、購入価額に近い金額が得られるので、実質的に「低い税額で現金贈与ができる」状態になる。

● 租税回避スキームとして広がっている

複数の実例が出ている以上、国税庁は「構造的な問題」と捉えている。


■ 他にも「問題例」

国税庁は、次のような不動産を使った節税手法も併せて提示しました。

● 相続直前に“一棟マンション”を駆け込み取得

マンション通達の適用外となる一棟マンションについて、相続直前に取得して評価額を圧縮する事例も紹介。

これは、マンション通達制定時のパブコメでも議論されていた論点で、今回あえて例示したということは、こちらも規制強化の可能性が高いと言えます。


■ 貸付不動産の評価問題

通達では「借家人がいるほど評価が下がる」仕組みですが、実際の市場価格は逆に稼働率が高い方が価値が高いのが通常です。

国税庁は
「市場価値と通達評価額の乖離」
が大きくなりやすい点も問題として整理しています。


■ 今後どうなる?税務実務で想定されること

今回の発信は、国税庁の問題意識を“公式に表明した”場面です。
考えられる方向性は、

◎ 小口化商品への評価ルールの新設

通達に特則を追加し、
市場価格に近い評価を求める可能性が高い。

◎ 相続直前取得への“按分評価・事業実態重視”

マンション通達の適用範囲が広がる可能性も。

◎ 過度な節税は今後、財産評価基本通達6項の対象に

現状でも6項で否認される可能性はあるが、
実務での扱いが明確化される流れが考えられる。

財産評価基本通達6項とは

通常、財産は国税庁の定める「財産評価基本通達」に基づいて評価されますが、6項では「この通達による評価が著しく不適当」と認められる場合、別の方法(たとえば「不動産鑑定評価」)で評価できるとしています。


■ まとめ(税理士としての見解)

今回の国税庁の資料公表は、不動産小口化商品の節税スキームに明確にメスを入れる姿勢を示したものと言えます。

  • 評価差が極端に大きい
  • 売却してすぐに現金化できる
  • 実質的に低額贈与と同じ効果

こうした状況は、国税庁としても看過できないでしょう。

今後、
・評価通達の改正
・個別ルールの制定
・6項の積極適用

のいずれか(または複数)が行われる可能性が高いと考えられます。

相続対策として不動産小口化の利用を検討している方は、制度変更の動向を注視し、「節税」ではなく「適正な承継」を考えるフェーズに入ってきています。

田中雅樹(税理士)

●単発相談担当・税務顧問担当はタナカ本人です
●社長の「こうしたい」を取り入れた問題解決を提案
●県内の専門学校・非常勤講師として『租税法』他を担当(2019年4月~)
●FM-FUJI「教えて税理士さん」出演(東京地方税理士会広報活動)
●ブログは毎日

 

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