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【同居していても“生計を一にする”にならないケースとは?】裁判例で読み解くポイント

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青色事業専従者給与や必要経費の可否を判断する際に、とても重要なのが
「生計を一にするかどうか」
という基準です。

同居していれば基本的には“生計を一にする”と判断されます。
が、裁判例を見ていくと、同居していても 「独立した生計」と認められるケースもある ことがわかります。

本記事では、通達・裁判例を踏まえつつ、
同居でも“生計を一にしない”と認められる条件と、反対に認められない典型例
を解説します。


■ 1. まずは通達の基本ルール:同居=ほぼ「生計を一にする」

所得税基本通達では、次のように定められています。


【所得税基本通達 2-47 生計を一にするの意義】

  • 同居していれば、原則「生計を一にする」と推定する
  • ただし、「明らかに独立した生活を営む」と認められる場合は除外

同居している場合、反論しない限り“生計を一にする”扱いになる
というのがスタートポイントです。

裁判でも「同居=生活費を共通にしていると推定する」という扱いが一般的。
これを覆すためには 収入・支出状況の明確な独立が必要 となります。


■ 2.  “生計を一にする” と判断された典型例

まずは、否認された(=生計を一にしているとされた)事例から。


● 徳島地裁(平成9年)

同居していて生活費の区別が不明確=生計を一にすると推定

裁判所は次のように述べています:

  • 「生計を一にする」とは同一の財布で生活していること
  • 同居親族の場合、生活費の区別が曖昧なら生計を一にすると推定される

つまり、曖昧な生活費の管理はアウト です。


● 岡山地裁(平成12年)

内部で負担割合を決めても、実際の精算がなければ独立とは認められない

裁判所が問題視したポイント:

  • 同居
  • 光熱費等は負担割合を決めていたが 実際に精算はしていない
  • 収入元は別でも、「支出の分離」が不十分

→ 結果、生計を一にしていると判断

「負担割合」や「按分」は形式にすぎず、
実際の精算=事実が最重要 ということです。


● 最高裁(平成10年)

部屋を分けて住んでいても、生活費の明確な区分がなければ「生計を一」

  • 生活スペースを区切っても
  • 住民票を分けても
  • 水道光熱費などの実費精算をしていなければ

“生計を一にする” と判断


■ 3. では、どんな場合に「独立した生計」と認められるのか?

ここが本記事の核心です。


■ 千葉地裁(平成8年) 同居でも「生計を一にしない」と認められた代表例 

“給与を受けていた弟” が「独立生計」と認められたケース

ポイント:

  • 毎月きちんと給与を支給
  • その給与から 弟自身が食費として母に2万円を支払い
  • 残りのお金は 弟が自由に管理・使用
  • 支出が明確に弟の自己管理で完結していた

独立の生計を営んでいたと認定し、生計を一にしないと判断

つまり、このケースでは
✔ “支出の独立性” が勝敗を分けました。


■ 千葉地裁の背景にある最高裁判例(昭和51年)

最高裁の考え方はこうです:

  • 収入源が親の事業でも
  • 支出を自分の責任で行っていれば

「生計を一にする」とは言えない

逆に言えば、
✘ 収入の源泉は関係ない
◎ 使い道(支出の独立性)が最重要


■ 4. 裁判例から見える「生計を一にしない」ための実務ポイント

整理すると、裁判所が重視するのは 次の2つ


1. 収入を本人が管理しているか

  • 給与が本人に渡っている
  • 収入の使途を本人が決めている
  • 生活費を本人が一定額負担している

2. 支出が本人の責任で行われているか

特に:

  • 光熱費・食費などの 実費精算があるか
  • 支払方法(口座振替・現金)は本人か
  • 家賃・雑費も本人が負担しているか

これが「独立した生計」の決定的ポイントです。


■ 5. よくある誤解:「生活スペースを分ければOK?」

→ 誤りです。

裁判では一貫して、

生活スペースの区分は参考程度。重要なのは収入と支出の実態。

とされています。

間取りや住民票よりも
生活費の実際の流れ が圧倒的に重要です。


■ 6. まとめ:同居でも「独立生計」は可能だが、要件は厳しい

裁判例から導ける結論は明確です。


【同居=自動的に生計一とされる(反論は難しい)】

しかし、

【収入と支出の流れが本人で完結していれば、生計一とは認められないこともある】

実務的には次の整備が欠かせません:

  • 食費・光熱費等の 実費精算を毎月行う
  • 経済的に自立した支出状況を証拠化
  • 給与は本人が自由に管理
  • “生活費の混同” を避ける仕組みを構築

田中雅樹(税理士)

●単発相談担当・税務顧問担当はタナカ本人です
●社長の「こうしたい」を取り入れた問題解決を提案
●県内の専門学校・非常勤講師として『租税法』他を担当(2019年4月~)
●FM-FUJI「教えて税理士さん」出演(東京地方税理士会広報活動)
●ブログは毎日

 

本日記

通っているスポーツジム、無暖房です。
体が暖まれば気にならないわけですが、それまでがなかなか。
低体温症を甘く見てはいけないと最近知りまして、面倒でも上着を用意すべきかと。
あるいは移籍するしかないのかもしれませんね。

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