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期末に支払った生命保険料は損金になるのか?──短期前払費用の基本とクレジットカード問題

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「期末に支払った年払いの生命保険料って、その期の損金にできるのか?」

結論から言うと──

原則は「資産計上」。でも特例で損金にできる

会社が生命保険に加入し、年払いで保険料を支払ったとします。
しかし、その保険期間の大半は翌期です。

原則

→ 保険料の大半を前払費用として資産計上

特例

「短期前払費用」の特例によれば、支払った期の損金にできます。
ただし万能ではなく、以下のようなケースでは否認されるリスクがあります。

  • 多額すぎる場合
  • 意図的に損金を増やして利益調整していると判断される場合(租税回避)

短期前払費用の根拠はここ

法人税基本通達 2-2-14 に次のように書かれています。

支払った場合において、
その支払った額に相当する金額を継続して
支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、
これを認める。

言い換えますと、

  • 期末までに支払っていること
  • 毎期同じ処理を続けていること
  • あくまで前払費用の対象(1年以内の期間対応)であること

がポイントになります。


手形払いはOK。その理由は?

生命保険料は手形では払えませんが、他の費用では手形払いが可能です。
ここで重要なのは、『短期前払費用の要件に「現金の流出」は必須ではない』という点。

  • 手形払いもOK
  • 「支払=債務の確定」があれば要件を満たす

という考え方です。


クレジットカード払いは?

ここが実務上の超ホットポイントです。
次のとおり、結論が分かれてしまっています。

TKCの税務Q&A(令和6年9月19日)

→ 短期前払費用の適用はできない

理由:

  • 銀行口座の引き落としは翌期になる
  • つまり「支払った」とは言えない
  • 経理として「保険料/未払金」は成立しない

税務研究会の質疑応答事例

短期前払費用の適用は可能

理由:

  • クレジットカード決済時点で支払義務が確定
  • 実務でも「支払ったとみる」ことができる

結論:期末のクレジットカード決済はリスクあり

もし期末にクレジットカードで年払保険料を支払った場合、

  • 税務調査で指摘されるリスクあり
  • そのリスクを避けるため、顧問税理士に損金算入をやめておきましょうと言われる可能性あり

実務としては、💡年払保険料は「振込 or 口座引落」が安全。
これが最も無難です。


まとめ

支払方法 短期前払費用OK? 備考
銀行振込 最も安全
口座引落 問題なし
手形 現預金が減ってなくてもOK
(ただし保険料支払いでは考えられない)
クレジットカード × or △ 見解分かれる。安全ではない

最後に

「短期前払費用」は節税手段として有名ですが、否認リスクもあります。

特にクレジットカード問題は見解が割れているため、実務では安全運転が最優先というスタンスが推奨されます。

保険料だけでなく、家賃・リース料・顧問料などの年払い案件でも同じ論点があります。
実務に関わるかたはぜひ押さえておきましょう。

田中雅樹(税理士)

●単発相談担当・税務顧問担当はタナカ本人です
●社長の「こうしたい」を取り入れた問題解決を提案
●県内の専門学校・非常勤講師として『租税法』他を担当(2019年4月~)
●FM-FUJI「教えて税理士さん」出演(東京地方税理士会広報活動)
●ブログは毎日

 

本日記

北風が寒いです。
ところで今日は朝の渋滞を避けるため、8時前に出発したのですがまぁまぁ混雑。
7時くらいなら空いているのでしょうが。

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