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後継者に経営を委ねた「代表取締役会長」──役員報酬はいくらが適正か?

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経営のバトンタッチあるある。
社長が後継者に経営を任せ、自身は代表取締役会長に退くケースです。

見た目には“会長”となっても、金融機関や取引先との関係から「代表取締役の肩書きは残しておきたい」という事情もあるでしょう。

ここで1つ問題になるのが、新会長の「役員報酬」をいくらにするのが妥当なのか?という点です。

今回は、国税不服審判所の**非公開裁決(平成3年5月30日)**をもとに、実際に争われたケースをやさしく解説します。


■ 事例の概要

後継者に経営を任せ、自らは代表取締役会長となった元社長。
役員退職金は受け取らず、経営の一部には引き続き関わっていました。

この会長が行っていた主な業務は次のとおりです。

  • 中期営業計画の企画立案
  • 生産・品質に関する日報への検印
  • 雇用契約書、安全衛生委員会報告書などへの検印
  • 金融機関との融資交渉

業務量は減ってはいますが、重要な経営判断には関与していました。
実際に支払われていた報酬は次のとおりです。

  • 昭和62年2月期:12,000,075円
  • 昭和63年2月期:12,000,068円
  • 平成元年2月期:12,000,056円

■ 国税の見解:「非常勤役員」として否認

国税はこれを「非常勤役員」と位置づけ、おおむね年額8,040,000円程度が妥当と主張しました。
理由は次のとおりです。

  • 社長時代と比べて職務内容が大きく異なる
  • 会長の執務場所が会社にない
  • 常勤ではなく非常勤に近い

その結果、国税は次の金額を過大役員報酬として否認しました。

  • 昭和62年2月期:4,000,000円超
  • 昭和63年2月期:約4,000,000円
  • 平成元年2月期:約3,000,000円

■ 審判所の判断:「常勤役員」と認める

一方で、国税不服審判所は次のように判断しています。

会長は主要取引先との関係上、依然として強い影響力を持ち、
金融機関からの信用も厚い。
そのため、後見役として経営上の重要事項に関与しており、
「常勤役員」としての職責を果たしている。

また、自宅が本社敷地内にあり、日々の生産状況を把握して指示を出していた点も重視されました。

ただし、社長時代よりも業務が軽減していることは事実。
であるとして、類似法人のデータを基に、**「適正報酬額」を再計算**した結果がこちらです。

決算期 適正額 否認額(過大部分)
昭和62年2月期 7,800,000円 4,200,075円
昭和63年2月期 8,500,000円 3,500,068円
平成元年2月期 9,000,000円 3,000,056円

■ 実務でのポイント

役員報酬が過大かどうかは、以下の要素を総合的に判断します。

  • 役員の職務内容
  • 法人の収益状況
  • 従業員給与とのバランス
  • 同業他社の水準

「代表取締役会長」として実際に経営に関わっているなら、社長時代と同額でも否認されない場合もあります。

ただし、業務量が大幅に減っているにもかかわらず報酬を据え置くと、否認リスクがあることは覚えておきましょう。


■ まとめ

代表取締役会長の報酬は「地位」ではなく「実態」で決まります。
形式的に代表権があっても、日常の業務をほぼ後継者に任せているなら、報酬を減額するのが安全です。

逆に、取引先や金融機関との折衝などに引き続き関与しているなら、「常勤」として一定の報酬を維持できる余地も十分あります。

💬 まとめの一言
「会長」だから低く、「代表」だから高く──ではなく、
実際にどんな働きをしているか。
税務上は“役職名より実態”で判断されることを忘れずに。

田中雅樹(税理士)

●単発相談担当・税務顧問担当はタナカ本人です
●社長の「こうしたい」を取り入れた問題解決を提案
●県内の専門学校・非常勤講師として『租税法』他を担当(2019年4月~)
●FM-FUJI「教えて税理士さん」出演(東京地方税理士会広報活動)
●ブログは毎日

 

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