【速報】インボイス制度の「2割特例・8割控除」は縮小のうえ延長へ― 自民税調が見直し案を提示 ―
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2025年12月16日、自民党税制調査会は小委員会を開き、
消費税のインボイス制度に関する経過措置の見直し案を示しました。
対象となるのは、いわゆる
- 2割特例
- 8割控除
の2つです。
結論から言うと、
👉 制度は縮小されるものの、適用期限は延長される方向
とされています。
今回は速報として、現時点で示されている内容を整理します。
■ 今回示された見直しの全体像
今回の見直し案のポイントは、次の3点です。
- 2割特例は「個人事業者向け」に形を変えて2年延長
- 8割控除は最終期限を延ばしつつ、控除率を段階的に引下げ
- 濫用防止として、免税事業者ごとの年間適用上限額を大幅に縮小
それぞれ、順に見ていきます。
■ 2割特例:個人事業者向けに「3割納税」で延長
● 現行の2割特例
インボイス制度を機に免税事業者から課税事業者へ転換した事業者について、
売上に係る消費税額の 2割を納税額 とできる特例
が設けられています。
● 見直し案の内容
今回の見直し案では、次のように整理されています。
- 対象者
👉 個人事業者 - 要件
👉 インボイス制度を踏まえて課税転換していること - 内容
👉 納税額を「売上税額の3割」 とする
(=仕入税額控除を 7割とみなす) - 期間
👉 さらに2年間に限って延長
ポイントは、
- 「2割」→「3割」へと 実質的に負担増
- ただし
👉 事務負担への配慮から制度自体は延命
というバランスです。
■ 8割控除:最終期限を延長しつつ、段階的に縮小
● 現行の8割控除
免税事業者からの仕入れについて、
一定割合を仕入税額控除できる経過措置
です。
● 見直し後のスケジュール(案)
今回示された案では、最終期限を2年延長したうえで、
控除率を次のように段階的に引き下げるとされています。
| 適用開始時期 | 控除割合 |
|---|---|
| 令和8年10月〜 | 7割 |
| 令和10年10月〜 | 5割 |
| 令和12年10月〜 | 3割 |
| (令和13年9月末まで) | 最終期限 |
👉 「急にゼロ」ではなく、
時間をかけて免税事業者との取引コストを顕在化させていく設計
といえます。
■ 濫用防止:年間適用上限額を「10億円 → 1億円」へ
今回の見直し案で、実務的に最もインパクトが大きいのがこの点です。
● 見直し内容
免税事業者 1者あたり、8割控除等の対象となる年間仕入額の上限
- 現行:10億円
- 改正案:1億円
👉 大口取引を多数の免税事業者に分散する、といった
制度の濫用を強く牽制する内容になっています。
■ 実務への影響(現時点で言えること)
今回の速報段階で、実務的に押さえておくべき点は次のとおりです。
● 「延長=安心」ではない
- 制度は当面続くが
- 確実に不利な方向へ縮小
● 個人事業者は一時的な猶予
- 2割特例は形を変えて存続
- ただし
👉 恒久措置ではない
● 免税事業者との取引見直しは避けられない
- 8割 → 7割 → 5割 → 3割
- 上限額の大幅引下げ
👉 取引条件の見直し・価格交渉は中長期的に不可避
■ 今後の注意点
- これは あくまで税制改正大綱前の見直し案
- 今後の与党税制改正大綱・法案で
👉 文言・期限・要件が変更される可能性あり
とはいえ、
インボイス制度を「元に戻す」方向ではなく、
徐々に本来形へ近づけていく
という政策の方向性は、かなり明確になったといえます。
■ まとめ
- インボイス制度の2割特例・8割控除は
👉 縮小しつつ延長 - 個人事業者には一時的な配慮あり
- 免税事業者との取引コストは
👉 今後、段階的に顕在化 - 「いつまで使えるか」ではなく
**「いつまでに体制を切り替えるか」**が重要
続報(税制改正大綱・法案成立)についても、
内容が固まり次第、改めて整理します。
田中雅樹(税理士)
●単発相談担当・税務顧問担当はタナカ本人です
●社長の「こうしたい」を取り入れた問題解決を提案
●県内の専門学校・非常勤講師として『租税法』他を担当(2019年4月~)
●FM-FUJI「教えて税理士さん」出演(東京地方税理士会広報活動)
●ブログは毎日

速報後記
いやー、かなり興奮した税のニュースでした。
興奮した=嬉しい
ではあるものの、中小零細の法人についての「2割特例」が「3割特例」に姿を変え、2026年9月で終了がほぼハッキリした感があります。
(あるいは再延長か、4割特例か、なんてことがあるのかも知れませんが)
小規模事業者の「インボイス登録の取りやめ」を検討するならお早めに…ですね。