【自民税調がインボイス経過措置を議論】2割特例・8割控除は延長?“悪用スキーム”として何が問題視?
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インボイス制度が始まって2年。
導入時に設けられた 「小規模事業者への経過措置」 が、いよいよ期限を迎えようとしています。
2025年11月26日、自民党税制調査会(自民税調)の小委員会では、この経過措置について議論が行われました。
特に注目されたのは次の2つ。
- 2割特例(インボイス登録直後の小規模事業者向け)
- 8割控除(免税事業者からの仕入れに対する時限的控除)
どちらも2026年9月末で終了する予定ですが、延長に関する言及はゼロ。
その代わりに自民税調が示したのは、これらを利用した “租税回避スキーム”の実例 でした。
■ そもそも「2割特例」「8割控除」とは?
2割特例(売上税額の2割だけ納付すればよい)
- インボイス登録をしたばかりの小規模事業者向け
- 売上に係る消費税の 2割だけ納付すればよい 特例
8割控除(免税事業者からの仕入れの80%を控除)
- インボイス制度導入で不利になる小規模事業者との取引を支えるための措置
- 免税事業者から仕入れても、仕入税額の 8割を控除してよい
本来は「小規模事業者を守るため」の制度です。
しかし実務の現場では、これが一部で 課税回避に利用されている と指摘されています。
(2026年10月から3年間は「50%」を控除)
■ 自民税調が示した「悪用スキーム」はこれ
2割特例を悪用したケース
自民税調の資料では、次のようなスキームが紹介されました。
【悪用パターン】
- A社(課税事業者)がインボイス登録した新会社Bを設立
- 取引主体をA社からB社へ変更
- B社はインボイス登録事業者のため、取引先は仕入税額控除を維持
- B社は「2割特例」を使い、消費税の納付額を大幅に圧縮
つまり、
グループとしての消費税負担を下げるために会社を作る
という行為が問題視されています。
8割控除を悪用したケース
海外グループ会社を利用したスキームです。
【悪用パターン】
- 日本法人(課税事業者)が、同じグループの海外法人(免税事業者)から商品を購入
- 日本国内の倉庫に搬入された時点で「国内の仕入れ」と扱われる
- 免税事業者からの仕入れでも 8割控除を適用
- 結果としてグループ全体の消費税納付額が減少
本来は 国内の小規模事業者を守るための制度。
しかし実務上は「免税事業者なら海外法人でも対象になる」という穴が利用されていたわけです。
■ 経過措置は延長されるのか?自民税調の“沈黙”が示すもの
今回、自民税調は「延長するかどうか」 には触れませんでした。
その一方で、
- 2割特例の悪用例
- 8割控除の悪用例
をあえて資料に掲載したということは、
仮に延長するなら、悪用対策をセットで導入する可能性が高い
という示唆だと考えられます。
■ なぜここまで議論が白熱するのか?
インボイス導入後、
- フリーランスの負担増
- 小規模事業者の経営圧迫
- 消費税の逆進性の強化
- 中小企業からの反発
…など多くの課題が指摘されました。
そのため導入直後は緩やかな経過措置が必要でしたが、
- 小規模事業者の適応が進んだ
- インボイス登録率が一定程度まで上がった
- 経過措置の悪用が目立ってきた
こうした背景から、
「いつまでも続けるべきではない」
という空気が強まっています。
■ 税理士として考える「今後のポイント」
今後の焦点は次の3つです。
- 経過措置が延長されるか
→ もし延長されても、スキーム対策がセットになる可能性大 - 悪用されやすい部分をどう補正するか
→ 特にグループ内取引・海外との取引は、規制が強まる可能性 - 小規模事業者への支援をどう位置づけるか
→ インボイスによる負担増は事実で、ここをどう救済するかが課題
■ まとめ
インボイス制度は、実務の中で課題と工夫が積み重なってきました。
今回の議論は、
「制度を延命するか」ではなく、
「制度の歪みをどう是正するか」
に焦点が移りつつあることを示しています。
経過措置の期限である 2026年9月 までもうすぐ。
今月(2025年12月)の税制改正大綱は、大きな注目ポイントになるでしょう。
田中雅樹(税理士)
●単発相談担当・税務顧問担当はタナカ本人です
●社長の「こうしたい」を取り入れた問題解決を提案
●県内の専門学校・非常勤講師として『租税法』他を担当(2019年4月~)
●FM-FUJI「教えて税理士さん」出演(東京地方税理士会広報活動)
●ブログは毎日

本日記
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