新設法人の役員報酬は“3か月ルール”に注意!税制改正の動きも
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会社を設立したばかりの時期は、将来の業績が見えず、役員報酬をいくらに設定すべきか悩む方も多いと思います。
ところが、現在の税制では、役員報酬(定期同額給与)は期首から3か月以内に決定しなければならないというルールがあります。
この「3か月ルール」、新設法人にとってはなかなか厳しい制度かもしれません。
そこで今回は、ルールの概要やリスク、そして税制改正に関する最新の動きまでご紹介します。
■ 役員報酬の「3か月ルール」とは?
法人が支払う役員報酬について、損金算入が認められるには「定期同額給与」の要件を満たす必要があります。
この定期同額給与とは、毎月同じ金額で支給する給与を、期首から3か月以内に決定することが前提となります。
業績がまだ不透明な新設法人では、3か月以内に適切な金額を設定するのが難しい場合もあるでしょう。
そのため、以下のような対応が検討されます。
- ひとまず一定額の報酬を決議しておく
- 一部を「未払い計上」して、後日まとめて支払う
■「未払い→一括支給」は要注意!
一部を未払い計上したうえで、後からまとめて支給する方法を取る法人もあります。
しかしこれが税務上の「役員賞与」と認定されると、損金として認められないという事態が起こります。
たとえば、以下のような事例です。
- 役員報酬の一部を未払い計上
- 従業員の賞与時期などにまとめて支給
- 「賞与」扱いとされ、損金不算入と否認される
こうした事例は、過去にもいくつか存在しています。
新設法人だけでなく、既存法人でも注意が必要なポイントです。
■ 税理士会から「見直し」の要望も
このような運用が実務上の支障になっていることを受けて、日本税理士会連合会は、令和7年度の税制改正に関する建議書の中で、以下のような要望を財務省などに提出していました。
「新設法人に限っては、役員報酬の決定期限(3か月ルール)を緩和してほしい」
ただ、この要望は残念ながら通らず…。
今後どうなるかは未定ですが、現場の声を踏まえた制度改正の動きとして注目が高まっていけばと思います。
■ その他の改正要望も
なお、同じ建議書では、他にも以下のような要望が含まれています。
- 消費税の軽減税率の廃止
- インボイス制度に関する特例措置の延長
ただし、これらの要望については、今後も実現性が低いとも言われています。
特に軽減税率については、「軽減税率があるからこそ、インボイスが必要」という政府の答弁があるため、廃止は難しいと考えられています。
■ まとめ:制度を正しく理解して慎重に対応を
新設法人にとって、役員報酬の設定は悩ましい問題のひとつです。
しかし、「3か月以内に決定」「定期同額に支給」というルールを守らなければ、税務上の不利益を受ける可能性があります。
制度の動向にも注意しながら、計画的に役員報酬を設定していくことが大切です。
疑問がある場合は、早めに専門家に相談されることをおすすめします。
田中雅樹(税理士)
●単発相談担当・税務顧問担当はタナカ本人です
●社長の「こうしたい」を取り入れた問題解決を提案
●県内の専門学校・非常勤講師として『租税法』他を担当(2019年4月~)
●FM-FUJI「教えて税理士さん」出演(東京地方税理士会広報活動)
●ブログは毎日
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