クラウドファンディングによる売上計上時期と経理の注意点
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近年、クラウドファンディングは企業にとって新たな資金調達手段として注目を集めています。
●インターネット上のプラットフォームを通じて、
●自社の商品やサービスの企画を告知し、
●それに賛同した一般消費者から事前に資金を受け取る
仕組みです。
たとえば、モバイルプリンターで約3億円を集めた例や、国立科学博物館が約9億円を集めた例もあります。
規模の大小に関わらず、数千万円単位の資金が集まる事例も珍しくありません。
飲食店から製造業まで、幅広い業種で利用されているのが現状です。
1. 売上計上のタイミング
クラウドファンディングでは、入金時点ではまだ商品やサービスを提供していません。
このため、入金額はまず「前受金」として処理し、実際に提供が行われた時点で売上に計上します。
つまり、資金が振り込まれた段階で全額を売上計上するのは誤りです。
提供の進捗に応じて売上認識を行う必要があります。
2. 前受金管理の落とし穴
前受金管理には次のようなリスクがあります。
- 期末時点の前受金残高が正確に把握されていない
- 実際には売上に計上すべき金額が漏れている
- 経理部門と提供部門との情報共有が不十分
こうした管理不備は、「今期の適正な売上」が計上されない原因となります。
部門間の連携体制をあらかじめ整えておくことが不可欠です。
3. 手数料の処理方法
クラウドファンディングの運営会社は、手数料を差し引いた金額を振り込みます。
しかし、経理処理の際は、
●手数料差引後の金額ではなく「総額」で売上を計上し、
●手数料は費用として別建てで処理
します。
これを怠ると、消費税の課税関係にも影響します。
4. 消費税への影響
売上や経費の計上誤りは、以下のような消費税の判定に直結します。
- 消費税の納税義務の有無
- 簡易課税制度の適用可否
- 支払った消費税の控除可否
クラウドファンディングは金額やプロジェクト内容がサイトで公開されているため、国税当局も把握しやすい取引です。
売上計上の正確性は、税務調査でも確実に確認されるポイントです。
5. 国税当局の動き
国税庁はクラウドファンディングにも強い関心を示しており、2019(令和元)年7月には全ての国税局・沖縄国税事務所に
- 電子商取引専門調査チーム
- 関係部署の職員によるプロジェクトチーム
を設置しています。
電子商取引の一環として、クラウドファンディングは重点的な調査対象になり得るということです。
まとめ
クラウドファンディングは魅力的な資金調達手段ですが、経理処理や税務対応に細心の注意が必要です。
ポイント
- 入金は「前受金」として処理し、提供時に売上計上
- 部門間の連携で前受金を正確管理
- 手数料差引後ではなく「総額」で売上計上
- 消費税判定への影響を理解する
- 国税当局は動向を注視している
新たなチャレンジをする際こそ、足元の経理処理をしっかり固めましょう。
田中雅樹(税理士)
●単発相談担当・税務顧問担当はタナカ本人です
●社長の「こうしたい」を取り入れた問題解決を提案
●県内の専門学校・非常勤講師として『租税法』他を担当(2019年4月~)
●FM-FUJI「教えて税理士さん」出演(東京地方税理士会広報活動)
●ブログは毎日
本日記
お盆真っ只中…というわけで、道路が空いていて快適。
と、昨日も書いたような気がしますが。
天気のほうは久しぶりにしっかり晴れて猛暑。
Audibleで「国宝」聞いておりますが、細かいところはやはり難しめ。
大まかな流れが分かればOK。戻って聞き直さないようにしています。
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