役員報酬を増額する際の注意点 〜役員退職給与との関係も〜
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「数年後の役員退職給与を見据えて、役員報酬を増額したい」
と考える社長さん、いらっしゃるかと思います。
役員退職給与の基本的な計算は
最終報酬月額 × 在任年数 × 功績倍率
となっているからですね。
では、どの程度まで増額してもOKなのか?
今回は過去の裁判例や裁決事例を踏まえながら解説します。
役員報酬が否認される基準とは?
税法には具体的な数値基準はなく、以下の要素を総合的に見て判断されます。
- 役員の職務内容
- 法人の収益の状況
- 従業員への給与の状況
- 同規模の同業他社の役員報酬の状況(売上の2分の1~2倍の範囲)
「単に高額」であれば否認されるのではなく、「不相当に高額」な部分のみが損金不算入とされます。
裁決の事例
大分地裁(平成20年12月1日判決)
- 法人が支給した役員報酬:月額200万円
- 国税・裁判所の認定額:月額130万円
→ 70万円の差でも「不相当に高額」と判断されました。
国税不服審判所(平成29年4月25日裁決)
- 中古自動車の輸出販売業を営む法人
- 社長の役員報酬が同業他社の「最高額」を超える部分を否認
判断理由は次のとおりです。
- 職務内容は特別に高額報酬を正当化できるものではない
- 法人の収益や従業員給与はおおむね一定
- 役員報酬の推移は数年で2倍以上に増加
「社長はいろいろやるんだから妥当な額だ」
という納税者の主張は認められませんでした。
実務上のポイント
- 収益の伸び率を役員報酬増額の根拠にできるかどうかが大事
- 適正額よりも低い役員報酬を支給している場合は、収益が一定でも増額が認められる余地はある
- ただし「適正額」の把握が難しく、同族会社で突出して役員報酬を上げると否認リスク大
特に、社長が高齢で役員退職給与を意識して増額していくケースでは、「過大役員報酬」だけでなく、それを前提にした「過大役員退職給与」もダブルで否認されるリスクがあります。
まとめ
- 役員報酬は「不相当に高額」である部分のみ否認される
- 判断基準は職務・収益・従業員給与・同業他社との比較
- 退職金対策のための増額には特に注意が必要
役員報酬の金額設定は、法人税・所得税・退職金税務に直結する重要なテーマです。
安易に増額せず、収益状況や同業他社との比較を示す根拠資料を整えておくことが肝心です。
田中雅樹(税理士)
●単発相談担当・税務顧問担当はタナカ本人です
●社長の「こうしたい」を取り入れた問題解決を提案
●県内の専門学校・非常勤講師として『租税法』他を担当(2019年4月~)
●FM-FUJI「教えて税理士さん」出演(東京地方税理士会広報活動)
●ブログは毎日
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お盆明けとともに酷暑日が帰ってきました。
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