ガソリン税の「特例税率」って何?廃止の動きと今後の課題
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最近ニュースでよく耳にする「ガソリン税の特例税率」。
「暫定税率って昔あったけど、今も続いてるの?」と思った方も多いのではないでしょうか。
今回は、ガソリン税の仕組みと特例税率の歴史、そして廃止をめぐる議論について整理してみます。
1. ガソリン税と特例税率の仕組み
「ガソリン税」という名前は法律上の正式名称ではなく、揮発油税と地方揮発油税をまとめた呼び方です。
現在、ガソリン1リットルあたり 合計53.8円 が課税されており、そのうち 25.1円 が特例税率分です。
本来の税率(本則税率)は 28.7円。つまり、特例税率はこの上乗せ部分を指します。
☝️昔は「暫定税率」と呼ばれていましたが、制度変更に伴って「特例税率」という名称になりました。
2. 暫定税率はなぜ始まった?
暫定税率は1974年、オイルショックによる燃料価格高騰と道路整備の財源不足を背景に導入されました。
当時、ガソリン税は道路特定財源として道路整備に使われていましたが、2009年4月にこの制度は廃止され、ガソリン税は一般財源(使い道を特定しないお金)になりました。
制度が変わった時、「暫定税率」そのものは廃止されたものの、同額分を特例税率として維持。
つまり「名前は変わったけど、上乗せ分は残っている」という状態です。
3. 二重課税では?という声
ガソリンには、
- 本体価格
- ガソリン税(本則+特例)
- 石油石炭税
これらの合計額に対して消費税がかかります。
この仕組みを「二重課税だ!」と批判する声があります。
政府は「ガソリン税は事業者、消費税は消費者が負担するもので、法的には二重課税ではない」と説明していますが、実際には消費者の家計負担は増えるため、特に燃料価格が高い時期には不満が高まりやすい構造です。
4. トリガー条項とは?
「トリガー条項」とは、ガソリンの平均小売価格が3か月連続で160円を超えた場合に、特例税率を一時的に停止し、本則税率に戻す制度です。
これが発動すると1リットルあたり25.1円の減税になります。
しかし、この制度は長らく凍結中。
理由は以下の通りです。
- 税収が大きく減る(国・地方の財政への影響)
- 価格変動で市場が混乱する可能性
- 事業者の事務負担増
結果として、消費者支援よりも市場の安定と財政健全性が優先されている形です。
5. 今後の見通し
与野党間では特例税率廃止に向けた議論が進んでおり、2025年内の廃止が有力とされています。
ただし課題も多く、特に「代わりの税収をどう確保するか」が大きなテーマです。
背景には、自動車の燃費向上やEV化によるガソリン消費量の減少があり、ガソリン税収そのものが減ってきています。
そのため特例税率の廃止は単なる減税ではなく、脱炭素社会への移行期における税収構造の見直しという大きな課題と直結しています。
まとめ
- ガソリン税は本則28.7円+特例25.1円=合計53.8円
- 特例税率は暫定税率の“名前を変えた”継続措置
- 二重課税批判はあるが、法的には二重課税ではない
- トリガー条項は凍結中
- 廃止には代替財源の確保が必要
ガソリン価格の高騰は家計に直撃しますが、その裏側には国・地方財政やエネルギー政策の難しいバランスがあります。
特例税率の行方は、今年から来年にかけての重要な政治テーマのひとつとなりそうです。
田中雅樹(税理士)
●単発相談担当・税務顧問担当はタナカ本人です
●社長の「こうしたい」を取り入れた問題解決を提案
●県内の専門学校・非常勤講師として『租税法』他を担当(2019年4月~)
●FM-FUJI「教えて税理士さん」出演(東京地方税理士会広報活動)
●ブログは毎日
昨日記
昨日はお盆の谷間?だったのか、3連休中に比べ朝の道路はやや混み。
前線の影響で気温はそれほどでないものの、蒸し暑さで不快感はけっこうなものでした。
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