【金融所得も保険料に反映へ】申告不要を選んだ場合でも影響?医療・介護保険見直しの方向性を解説
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2025年12月5日、高市早苗首相は経済財政諮問会議において、後期高齢者医療制度などを念頭に、医療・介護保険における応能負担の徹底に向けた制度設計を進めるよう関係閣僚に指示しました。
その中でも注目されているのが、
これまで保険料算定に反映されていなかった金融所得を、今後は反映させる方向
という点です。
本記事では、
「なぜこの議論が出てきたのか」
「何がどう変わる可能性があるのか」
「実際に影響が出るのはいつ頃か」
を整理して解説します。
■ 現在の医療・介護保険料の仕組み
現在、次の制度における保険料や自己負担割合は、
- 後期高齢者医療制度
- 国民健康保険
- 介護保険
いずれも原則として、
市町村民税の課税所得
を基礎として算定されています。
このため、所得税の申告内容が、
そのまま医療・介護保険の負担に影響する構造になっています。
■ 問題とされている「金融所得」の扱い
問題視されているのは、次のような金融所得です。
- 上場株式の譲渡益
- 上場株式の配当等
これらは、
- 確定申告をする
- 申告不要を選択する(源泉徴収で課税関係が完了)
という選択が本人に委ねられています。
● 何が問題か?
申告不要を選択した場合、
- 所得税・住民税は源泉徴収で完結
- 市町村民税の課税所得に反映されない
結果として、
多額の金融所得があっても、
医療・介護保険料や窓口負担が低く抑えられる
という状況が生じています。
これが「不公平ではないか」という問題意識の背景です。
■ 政府・審議会の考え方
● 高市首相の指示(2025年12月5日)
- 金融所得を含めた応能負担の徹底
- 年末までに結論を得る
- 令和8年度予算編成や制度改正に反映
という、かなり踏み込んだ内容となっています。
● 財政制度等審議会の建議
12月2日に公表された建議では、次のような提言がされています。
- 現在、保険料の賦課対象とされていない金融所得のうち
申告の有無を選択できるものについて
・保険料の算定ベースに追加
・窓口負担割合の判定にも活用 - 能力に応じた公平な負担を実現すべき
一方で、
NISAなどの非課税所得については、引き続き対象外
とする前提も明示されています。
■ 「すぐに変わる」わけではない点に注意
この見直しについては、
実際に保険料等へ反映されるまでには4~5年程度かかる
と想定されています。
社会保障審議会医療保険部会の資料によれば、
- 年明けの通常国会に法案提出
- 成立・公布
- システム改修、自治体対応
といったプロセスを経る必要があり、
即時実施は現実的ではないとされています。
■ 実務・個人への影響は?
現時点では、
- 今すぐ確定申告の判断を変える必要はない
- 制度の方向性を「知っておく」段階
といえます。
ただし将来的には、
- 金融所得が多い高齢者層
- 申告不要制度を活用してきた人
にとって、
「申告しない=保険料に影響しない」
という前提が崩れる可能性
があります。
■ まとめ
今回の動きのポイントを整理すると、
- 医療・介護保険における応能負担を強化する方向
- 申告不要を選択した金融所得も、将来的に保険料算定に反映する構想
- NISAなどの非課税所得は対象外の想定
- 実現は早くても 4~5年後
という内容です。
税制と社会保険は、
これまで以上に「切り離して考えられない時代」になりつつあります。
今後、制度の具体化が進めば、
資産運用・申告判断・老後設計にも影響してくるテーマですので、
引き続き動向を注視していく必要があります。
田中雅樹(税理士)
●単発相談担当・税務顧問担当はタナカ本人です
●社長の「こうしたい」を取り入れた問題解決を提案
●県内の専門学校・非常勤講師として『租税法』他を担当(2019年4月~)
●FM-FUJI「教えて税理士さん」出演(東京地方税理士会広報活動)
●ブログは毎日

本日記
先週末、少し体調を崩していました。
のどが弱いのでたいていそこから来るのですが、今回は無し。
痛める前からうがい薬をつかったり、睡眠時間をじゅうぶんに確保したりと、免疫高めをキープできるように心がけていたからでしょうか。
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