【総合課税の対象さらに拡大へ】社債利子節税スキームに追加対策――税制改正の方向性
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自民党税制調査会が11月26日に示した「納税環境整備案」の一部として、総合課税の対象となる社債利子の範囲を拡大する方向性が示されました。
「また少し制度が複雑になるのでは?」と感じる方も多いかもしれません。
この記事では、今回の追加対策の背景とポイントを、できるだけシンプルに整理して解説します。
■ 背景:社債利子を使った“給与→利子”の転換
通常、社債の利子は20%の分離課税です。
一方、**役員報酬や給与は総合課税(最高55%)**となります。
この差を利用し、
本来は総合課税になるはずの役員報酬等を、社債利子に「付け替える」ことで税負担を軽減する
というスキームが過去から繰り返し行われてきました。
これを防ぐため、過去の税制改正で以下のような対策がとられています:
- 平成25年度改正
同族会社の株主が受け取る社債利子は総合課税へ - 令和3年度改正
個人が支配する法人を介在させても総合課税の対象へ
しかし、制度をすり抜ける新たな方法が登場。
これに限らずですが、“いたちごっこ”の様相となっていました。
■ 今回把握された新たなスキーム
今回追加対策の対象となったのは、次の 2パターン です。
同族会社と株主の間に「第三者法人(特定法人)」を挟む
第三者の法人を利用して支払いルートを複雑化させ、
表面上は同族会社からの支払いではないように見せる手法。
(第三者法人介在型)
株主が複数の同族会社(特定法人)から利子を受ける
実態は同族会社からの支払いにほぼ近いにもかかわらず、
複数法人を経由させることで分離課税にしてしまう手法。
(たすき掛け型)
■ なぜ問題になるのか?
これらは「通常行われない取引関係」を意図的に組むことで、
総合課税を免れる仕組みを人工的につくる ことが可能です。
実態は“役員報酬の付け替え”に近いケースでも、
表面的には分離課税の利子所得として扱えてしまうため、
制度趣旨に反する結果となります。
■ 令和8年度税制改正での追加対策(予定)
今回の改正方向性では、次の内容が示されました。
● 特定法人からの社債利子も総合課税へ
上記2パターンのケースのように、特定法人を介した場合も
株主が受け取る社債利子は 総合課税の対象に追加 。
● 「通常行われない取引」であることを示す要件を設定
例えば:
- 同族会社が発行した社債を担保にしている
- 同族会社が債務保証を行っている
- 実態として同族会社の支払いと変わらない
といった状況を満たす場合に対象とされます。
● 償還差益も総合課税へ
利子だけでなく、償還差益も同様に総合課税へ。
■ 今回の改正の位置づけ:引き続き「実質重視」へ
ここ数年、税制は一貫して
形式ではなく、実質で判断する姿勢を強化
しています。
今回の追加対策もその流れの延長線上にあり、
“形式だけ整えた節税スキーム”は通用しにくくなる方向です。
■ まとめ
- 社債利子は原則20%分離課税だが、給与や役員報酬の付け替えに悪用されるケースが続いていた
- 平成25年・令和3年改正に続き、令和8年度改正で追加対策へ
- 「第三者法人を介在」「複数の同族会社を経由」などの新スキームも総合課税に
- 実質的に同族会社からの利益移転と判断される場合は、利子も償還差益も総合課税へ
「8年度改正」と書いてきましたが、現時点(2025年12月8日)で、どのタイミングで施行となるかは分かりません。7年度(2026年3月まで)中にこの改正が入ってくるとは思えませんが、それもまた(分かりません)。
田中雅樹(税理士)
●単発相談担当・税務顧問担当はタナカ本人です
●社長の「こうしたい」を取り入れた問題解決を提案
●県内の専門学校・非常勤講師として『租税法』他を担当(2019年4月~)
●FM-FUJI「教えて税理士さん」出演(東京地方税理士会広報活動)
●ブログは毎日

本日記
「無職転生 異世界行ったら本気出す」、「データブック」「蛇足編1」をAudibleで聞き終わりました。
原作26巻を聞き終えてまだ楽しませてくれる著者や、オーディオブック版制作者には感謝しかありません。
この後は「佐藤と若林の3600」を消化していこうと思います。
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