東京都の消費税未納問題──20年も気づかれなかった理由と、私たちが学ぶべきこと
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東京都が、都営住宅などの「特別会計」で扱うお金について、本来納税すべき消費税を長年(約20年)納めていなかったことが明らかになりました。
発覚したのは、2019年度から2022年度までの分で、合計およそ1億3,600万円。
それ以前の分についても納税すべき消費税があったものの、それは時効であるという説明です。
(原則時効は5年)
20年近くも未納のまま気づかれなかったこの問題。
なぜ起きたのか? そして、ここから何を学ぶべきなのか?
税理士の立場から、できるだけわかりやすく整理します。
1. 「特別会計」ってなに?──消費税が関係あるの?
今回のキーワードは「特別会計(とくべつかいけい)」。
都の仕事の中でも「特定の目的に使うお金」を分けて管理する仕組みのことです。
たとえば──
- 都営住宅の管理
- 都立病院の運営
- 水道や交通などの公共サービス
こうした「事業として行っている活動」は、一般の企業に近い部分があります。
そのため、場合によっては消費税の申告・納税が必要になるんです。
一方で、都庁の「一般会計」(いわば本体の家計)では、消費税の申告は不要です。
東京都は「特別会計では消費税が関係する可能性がある」という点について、誤って理解していたと説明しています。
(=分かってなかった…ってことです)
2. どうして20年も気づかなかったの?
都の説明によると、
「特別会計も一般会計と同じく申告しなくていいと思っていた」。
実際には2000年代から課税対象になるケースがあったとされています。
つまるところ、制度の理解不足と内部チェックの甘さが重なって約20年も放置されていたというわけです。
これに対しては、
「都庁ほどの大組織が、そんな初歩的なミスを?」
という批判の声が多く上がっています。
(国税側にも問題アリです)
3. どのくらい納めたの?
東京都が今回の発覚を受けて納付した額は、2019~2022年度分の消費税と延滞税などを合わせて、約1億3,642万円。
かなりの金額ですが、これでもごく一部です。
それ以前の分(2002~2018年度など)は 時効が過ぎてしまった… とされています。
「未納分の多くは結局支払われないまま」になってしまったのです。
4. なにが問題なの?
この問題は単なる「うっかりミス」で済ませてはいけません。
主な論点は次の3つです。
行政の信頼性
税金を集めて使う立場にある東京都が、ルールを守れていなかったこと。
これは、都民の信頼を損ねる結果になりかねません。
公平性の問題
一般の会社や個人事業主は、きちんと消費税を申告して納めています。
公共機関が同じルールを守っていなかったとすれば、「公平感」が失われます。
チェック体制の不備
20年も気づかなかったということは、内部監査や税務のチェックが機能していなかった証拠。
制度の複雑さもありますが、組織的な見直しが必要です。
5. 私たちがこのニュースから学べること
この件は東京都だけの問題ではありません。
自治体や公的機関に限らず、「仕組みを分かったつもり」になって放置してしまうリスクはどんな組織にもあります。
税務も同じです。
消費税や所得税、インボイスなど、制度は年々変わっています。
だからこそ、「正しく理解して、定期的にチェックする」ことが大切です。
税務の世界では、“知らなかった”は通用しない。
今回のニュースは、その教訓をあらためて示しているように思います。
(国税庁にも大いに反省をしていただきたいですね。)
まとめ
- 東京都が特別会計での消費税未納を認め、約1億3,600万円を納付
- 原因は制度の誤解とチェック体制の不備
- それ以前の未納分は時効で請求不能
- 行政の信頼性と税の公平性が問われる事案
- 私たちも「仕組みを正しく理解する」ことが大切
✍️ 最後にひとこと
税金は、誰にとっても難しく、ややこしいものです。
でも、ルールを理解して守ることが「公平な社会」を支えます。
今回の件をきっかけに、身近な税の仕組みをもう一度見直してみるのもいいかもしれません。
田中雅樹(税理士)
●単発相談担当・税務顧問担当はタナカ本人です
●社長の「こうしたい」を取り入れた問題解決を提案
●県内の専門学校・非常勤講師として『租税法』他を担当(2019年4月~)
●FM-FUJI「教えて税理士さん」出演(東京地方税理士会広報活動)
●ブログは毎日
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一昨日、昨日と高めだった気温から一転。
今年は早めに秋が来たかと思ったら、思った日以後、そうでもない日もけっこうあって。
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