給与と報酬(外注費)は併存できる?〜社員を業務委託に切り替える前に知っておくべき税務リスク〜
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「社会保険料の負担を減らしたいから、社員を外注扱いにできないか?」
たとえば――
- 社員を丸ごと外注に変更
→雇用契約を解約し、業務委託契約に切り替える - 社員の仕事の一部だけ外注化
→社員としての業務を減らし、残りを業務委託契約にする
結論から言うと、実務的には非常にハードルが高いです。
税務上のリスク
税務調査では次のように指摘される可能性があります。
- 「これは給与だ」と認定される
- 消費税の仕入税額控除が認められない
- 源泉所得税の徴収漏れを指摘される
- その結果、過少申告加算税や不納付加算税、延滞税が発生
一度否認されると、会社側に大きな負担がかかります。
実際にあった事例
1. 可能とされたケース
スナックのホステスの例(国税不服審判所・平成26年7月1日裁決)
一部のホステスへの支払いが報酬として認められました。
理由は以下の通りです。
- 時間的拘束がない
- 完全歩合制で最低保証なし
- 売掛金の未回収分を本人が負担
- 店舗経費の一部を本人が負担
同じ職種でも「給与の人」と「報酬の人」が併存した珍しいケースです。
2. 認められなかったケース
塗装工事会社(東京地裁・令和3年2月26日)
雇用契約の社員を業務委託に切り替えましたが、
「働き方が抜本的に変わっていない」
として否認されました。
3. 給与と報酬が併存したケース
ホテル料理長の例(国税不服審判所・平成29年2月9日裁決)
- ホテルは料理長に給与を支払いながら、別途定額の報酬を支払っていた
- 料理長は報酬分からスタッフの給与を支払い、ホテルは雇用に関与せず
この状況が「給与+報酬」と認定されました。
実務上の「高いハードル」
制度上は可能でも、実行には以下のような課題があります。
- 労務管理の問題(労働法規や社会保険)
- 労務費の価格転嫁に関する指針(令和5年11月発表)
- フリーランス新法(令和6年11月1日施行)
- インボイス制度対応(独占禁止法・下請法・建設業法との関係)
単に「契約書を業務委託に変える」だけでは認められず、働き方そのものを大きく変える必要があります。
まとめ
- 給与と報酬の併存は、理論上は可能
- しかし、税務調査で否認されるリスクが高く、実務的にはほぼ不可能に近い
- 実行するには、働き方や業務内容を抜本的に見直す必要がある
社会保険料の負担軽減を目的に安易に進めると、後から大きな税務リスクを抱えることになります。
検討する場合は、税理士や社会保険労務士など専門家への相談が必須です。
田中雅樹(税理士)
●単発相談担当・税務顧問担当はタナカ本人です
●社長の「こうしたい」を取り入れた問題解決を提案
●県内の専門学校・非常勤講師として『租税法』他を担当(2019年4月~)
●FM-FUJI「教えて税理士さん」出演(東京地方税理士会広報活動)
●ブログは毎日
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