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貸倒損失は「いつの損金」になるのか? ― 裁決事例から学ぶ

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貸倒損失が税務調査で問題になることは少なくありません。
特に重要なのは次の2点です。

  • そもそも貸倒損失に計上できる状況か?
  • 計上できるならば、それはいつの損金なのか?

今回は、後者「いつの損金か」が争点になった裁決(平成20年6月26日)をご紹介します。


裁決の概要

事案の流れ

  • 債権者:A社 / 債務者:F社
  • 平成9年:F社が破産宣告、A社は約1,700万円を債権届け出
  • 平成11年:最後配当約64万円を受領、破産手続終結・登記簿閉鎖・官報公告
  • 平成18年:A社は「回収不能」と判断し、貸倒処理(約1,600万円超)を計上

納税者側の主張

  • 最後配当後も回収の可能性を信じていた
  • 平成18年に代表取締役が所在不明となり、回収不能と判断
  • よって平成18年の事業年度に貸倒損失を計上するのが妥当

国税不服審判所の判断

  • 法人破産手続では、終結決定・登記閉鎖の時点で法人は消滅
  • その時点で「分配可能な財産は無い」と判断される
  • よって、貸倒損失の時期は破産手続終結時であるべき
  • 納税者の「平成18年に回収不能と認識した」という主張は認められない

実務上の注意点

本来なら過去の事業年度で損金算入すべき債権を、今になって計上。
そうすると、今回のA社のように否認されてしまいます。

決算時に確認すべきこと

  • 貸借対照表に「不良債権」が残っていないか?
  • 回収努力をどのように行ってきたか?(記録は残っているか?)
  • その年度で貸倒損失に計上すべきものはないか?

「回収努力」を証明するために必要な記録

貸倒損失については、立証責任が納税者側にあります。
特に「回収努力をした証拠」が残っていないケースが多く、ここが大きな落とし穴です。

証拠となるものの例:

  • メールのやり取り
  • 電話録音、面談記録
  • 社内報告書・稟議書(回収状況を記録したもの)
  • 宛先不明で返送された請求書
  • 内容証明郵便(督促状)

これらを客観的に残しておくことで、税務調査の際に「貸倒処理が妥当だった」と説明しやすくなります。


まとめ

  • 貸倒損失は「いつの損金か」が大きな争点になる
  • 破産手続などの「法的に債権が消滅する時点」で計上すべき
  • 回収努力の証拠を残しておかないと、税務調査で否認リスクが高まる

貸倒損失は「後からまとめて処理する」では通用しません。
日頃からの記録と確認が、税務調査でのリスク回避につながります。

田中雅樹(税理士)

●単発相談担当・税務顧問担当はタナカ本人です
●社長の「こうしたい」を取り入れた問題解決を提案
●県内の専門学校・非常勤講師として『租税法』他を担当(2019年4月~)
●FM-FUJI「教えて税理士さん」出演(東京地方税理士会広報活動)
●ブログは毎日

 

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