ニガテを “半分、強い” に。山梨県中央市の税理士

相続税調査で実際にあった4つの事例― 国税庁公表事例から見る「否認されやすいポイント」―

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国税庁が公表した相続税調査事例(令和6事務年度)には、
**「やってはいけない相続対策」**が非常に分かりやすく書かれています。

今回は、「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」10ページから13ページに掲載された
4つの調査事例を、実務目線で整理します。


事例1:引き出した現金を自宅で保管し、申告から除外

事案の概要

被相続人の生前、預金口座から多額の現金が引き出されていました。
相続税申告では、その現金について **「寄付して残っていない」**として申告から除外。

しかし、税務署が相続人宅を調査したところ、
自宅金庫から多額の現金が発見されました。

税務署の判断

  • 現金は被相続人の財産であり、相続財産に該当
  • 税理士にも意図的に伝えていなかった点から 重加算税 を適用

結果

  • 増差課税価格:約2億5,000万円
  • 追徴税額:約1億2,000万円(重加算税あり)

👉 「現金ならバレない」という考えは完全に通用しません。


事例2:基礎控除以下に見せるため、家族名義口座へ資金移動(無申告)

事案の概要

相続開始前、被相続人の預金が
相続人やその家族名義の口座へ大量に移動されていました。

相続税の申告は行われず、
税務署からの照会に対しても **「基礎控除以下」**と虚偽回答。

決定的だったポイント

相続人宅の調査で、

  • 金融機関名
  • 残高
  • 名義人

などが詳細に記された 被相続人自筆のノート を発見。

結果

  • 増差課税価格:約7億2,000万円
  • 追徴税額:約4億3,000万円(重加算税あり)

👉 名義を変えても「実質」が被相続人ならアウトです。


事例3:国外子会社への貸付金を隠すため、返済先を国内法人に指定

事案の概要

被相続人は国外子会社に多額の貸付を行っていました。
しかし、その返済を被相続人の口座ではなく、
国内の親会社口座に振り込ませることで存在を隠していました。

税務署の調査手法

  • 過去の財務諸表の確認
  • 手帳・メモの調査
  • 海外送金データの突合

これらから貸付金の存在を把握。

結果

  • 増差課税価格:約4億4,000万円
  • 追徴税額:約1億8,000万円(重加算税あり)

👉 海外資産・国外法人絡みは、現在最重点調査分野です。


事例4:国外居住で連絡不能だった相続人に粘り強く接触(無申告)

事案の概要

相続人・被相続人ともに国外居住で、
相続税の申告が行われていませんでした。

連絡先も不明でしたが、
税務署は国内のわずかな手がかりを元に 電話・訪問を継続

調査の決め手

一時帰国中の相続人と接触することに成功し、
即座に実地調査を実施。

その結果、基礎控除超の財産が判明。

結果

  • 増差課税価格:約1億円
  • 追徴税額:約300万円
  • 納税管理人を選任し、期限後申告

👉 「海外にいれば大丈夫」は完全な誤解です。


まとめ:4事例から見える共通点

これらの事例に共通するのは、

  • ✔ 現金・名義・海外を使えば見つからないという誤解
  • ✔ 税理士に伝えなければ申告できないという構造
  • ✔ 「意図的な隠ぺい」は高確率で重加算税になる

という点です。

相続税調査は
「財産の移動」「名義」「実質」「海外」
横断的にチェックする時代に移行しています。

田中雅樹(税理士)

●単発相談担当・税務顧問担当はタナカ本人です
●社長の「こうしたい」を取り入れた問題解決を提案
●県内の専門学校・非常勤講師として『租税法』他を担当(2019年4月~)
●FM-FUJI「教えて税理士さん」出演(東京地方税理士会広報活動)
●ブログは毎日

 

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