【国税庁 調査事例から読み解く】海外資産・無申告・転売・金地金──最新4つの税務調査ポイントを解説
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国税庁が公表した「令和6事務年度の調査事例」から、実際に課税処分が行われた4つのケースを紹介します。
海外不動産の賃料収入、ネット転売、キャバクラ経営の名義借り、金地金の売却──
いずれも「申告漏れ・無申告」が問題となった典型例であり、今後の税務対応の参考になります。
📌 事例1:海外不動産の賃貸収入を申告せず
国外送金・CRS情報から発覚(申告漏れ約2.6億円)
調査対象者は譲渡所得だけを申告していましたが、税務署が「国外送金等調書」や「CRS情報」を分析したところ、多額の海外送金と海外口座の保有が判明。
調査の結果:
- 過去に海外赴任中にA国で購入した不動産を現在は賃貸に出していた
- B国の金融口座では投資信託収益や利子を受領
- これらを一切申告していなかった
⇒ 課税結果(3年分)
- 申告漏れ: 約 2億6,100万円
- 追徴税額: 約 1億1,600万円(加算税込み)
★ポイント
国税庁は海外口座情報(CRS)、国外送金データを広範に把握しているため、海外取引の秘匿は極めて困難。
📌 事例2:ネット転売による収入を無申告(ゲーム機・スマホ等)
書類破棄も「隠蔽行為」として重加算税(申告漏れ約7,600万円)
給与のほかに、ゲーム機・スマホを転売していたにもかかわらず、一切申告していなかったケース。
対象者は経費書類だけを保存し、売上資料はすべて破棄。
税務署は 反面調査 により売上を把握した。
⇒ 課税結果
- 所得税(7年分):申告漏れ 約7,600万円
- 所得税 追徴税額:約2,700万円(加算税込み、重加算税あり)
- 消費税 追徴税額(1年分):約200万円(加算税込み、重加算税あり)
★ポイント
ネット転売・せどり・フリマアプリの取引はデータで追える時代。
売上書類を破棄すると「隠蔽」と判断され、重加算税のリスクが極めて高い。
📌 事例3:従業員名義でキャバクラを経営し無申告
実質所得者ルールで課税(申告漏れ約1.18億円)
従業員名義で複数のキャバクラ店を運営していたが、税務署が内部情報から「実質経営者」と判断。
従業員名義で営業許可・決済をしていても、次の事実から実質経営者と認定:
- 売上管理
- 経営方針の決定
- 各種指示を行っていたのが調査対象者本人
⇒ 課税結果
- 所得税(6年分):申告漏れ 約1億1,800万円
- 同上 追徴税額:約4800万円(加算税込み、重加算税あり)
- 消費税 追徴税額(5年分):約 9,700万円(加算税込み、重加算税あり)
- 源泉所得税 追徴税額:約1,000万円(加算税込み)
★ポイント
名義を変えても実質の支配があれば「実質所得者」として課税される。
名義借りはリスクが非常に高い。
📌 事例4:相続した金地金の売却を申告せず
売却益を親族口座に移して秘匿(追徴約400万円)
相続した金地金を売却し、申告せずに親族口座へ送金して「足が付かない」と思っていた事例。
調査で以下が判明:
- 売却代金が本人の口座に入金
- その後、現金化や親族への送金で残高を減少
- 申告不要と装う意図が明確
⇒ 課税結果(1年分)
- 申告漏れ所得:約 1,300万円
- 追徴税額:約 400万円(加算税込み、重加算税あり)
★ポイント
金地金の売却も金融機関の資料から把握される。
「親族口座に入れればバレない」は通用しない。
【まとめ】今回の4事例からわかる税務調査の最新トレンド
| 調査対象 | 主な問題点 | 税務署の把握方法 |
|---|---|---|
| 海外不動産 | 海外収入の未申告 | CRS・国外送金データ |
| ネット転売 | 売上資料の破棄・無申告 | メール・スマホ履歴・反面調査 |
| 名義借り営業 | 実質所得者の隠蔽 | 従業員ヒアリング・内部資料 |
| 金地金売却 | 親族口座への送金で秘匿 | 金融機関データ |
国税庁はデータ分析・AI・反面調査を駆使し、無申告・隠蔽に極めて厳しい姿勢をとっています。
田中雅樹(税理士)
●単発相談担当・税務顧問担当はタナカ本人です
●社長の「こうしたい」を取り入れた問題解決を提案
●県内の専門学校・非常勤講師として『租税法』他を担当(2019年4月~)
●FM-FUJI「教えて税理士さん」出演(東京地方税理士会広報活動)
●ブログは毎日

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朝から強い北風が。
八ヶ岳おろしというやつです。
汗かくことを恐れてつい薄着しがちなんですが、気をつけねばと思っております。
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