【注意】社員に“給与の前借り”をさせてはいけない理由|思わぬリスクも!
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こんにちは、税理士の田中です。
「今月ちょっとお金が足りなくて…」
「給料日まで待てないので、前借りさせてもらえませんか?」
――そんな相談を受けたことのある経営者の方、いらっしゃるのではないでしょうか?
「助けてあげたい」「うちの会社は家族的な雰囲気だから」と、ついOKしたくなりますが…
実は、給与の“前借り”(前貸し)にはリスクが潜んでいます。
今回は、「なぜ社員に給与を前借りさせるべきではないのか?」を、わかりやすく解説します。
■ そもそも“前借り”と“前払い”は違う
よく混同されがちですが、実務上はこのように考えられます:
- 前借り:まだ支払期日が来ていない給与を、“貸し付け”という形で先に渡す
- 前払い:給与の締め日や支払日を調整して、正規の支払として前倒しする
→ 前借りは「貸し付け」、前払いは「給与そのものの早期支払い」。意味合いが違います。
■ 前借りのデメリット1:貸付金扱いになる
税務・会計上、前借りした給与は「従業員への貸付金」として処理されます。
- 給与として支払ったことにはならない
- 源泉所得税の計算にも含めない
- 帳簿上は貸し付けたお金になる
📌【ポイント】
→「給与支払」として扱えないため、給与計算・年末調整・社会保険の処理も複雑化します。
■ 前借りのデメリット2:返済トラブルになる可能性も
- 毎月の給与から差し引いて返済する予定だったのに、本人が辞めてしまった
- 退職時に前借り分(前貸し分)の精算ができず、回収不能になった
- 金銭トラブルに発展して、関係が悪化した
📌【よくあるケース】
→「泣きつかれて貸したけど、結局戻ってこなかった…」
■ 前借りのデメリット3:会社が“金貸し”になってしまう
前借りが常態化すると、従業員の金銭感覚に悪影響を与えることも。
- 本来の給与サイクルが乱れる
- 他の社員にも広まり、「借りやすい会社」になる
- 賃金管理や資金繰りにも悪影響が出る
📌【注意】
→ 会社の本業ではない「金融行為」が、組織の風土を変えてしまうリスクも。
■ じゃあ、どう対応すべき?
「前借り」ではなく、次のような方法がおすすめです:
✅ 給与の前倒し支払い(前払い)制度を設ける
→ 就業規則で明記し、正規の給与支払として処理すればOK。
✅ 金融機関の制度を案内する
→ 従業員貸付制度(自治体・銀行等)や、社内積立などの利用を検討。
✅ 一律対応ルールを作っておく
→ 情に流されず、公平なルールで対応できるよう整備を。
■ まとめ:やさしさだけで前借りをOKするのはキケン!
項目 | 内容 |
---|---|
前借り(前貸し)=貸付金 | 給与として扱えず、税務処理が複雑になる |
回収トラブルの可能性 | 辞めた後など、未回収になるリスクあり |
組織風土への影響 | 金銭トラブルの火種・借りぐせがつくことも |
対応策は制度化 or 代替手段 | 前払い制度や外部制度の活用がベター |
従業員を思う気持ちは素晴らしいことですが、会社は「給与」を通じて支える存在です。
制度化せずに対応すると、税務・労務・関係性、すべてに負担がかかる結果になることも。
「どうすればうちの会社に合った仕組みにできるか?」
ご相談、お気軽にどうぞ。
ひとりで悩まない。税務のプロが伴走します。
田中雅樹(税理士)
●単発相談担当・税務顧問担当はタナカ本人です
●社長の「こうしたい」を取り入れた問題解決を提案
●県内の専門学校・非常勤講師として『租税法』他を担当(2019年4月~)
●FM-FUJI「教えて税理士さん」出演(東京地方税理士会広報活動)
●ブログは毎日
本日記
給料の前貸しについて、深く考えたことがありませんでした。
税理士らしい?考え方というか認識としては、貸倒引当金の対象にならないよねー というくらいで。
友だち同士の貸し借りも関係が壊れる原因になったりしますし。
それは雇用する・される関係にあってもいっしょだよと、主に経営者のかたに伝われば幸いです。
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